フッ素加工フライパンには「PFAS（ピーファス）」と呼ばれる化学物質が使用されていますが、現在のところ健康被害に影響を与えるPFASは使用されていません。そのため、「フッ素加工フライパンが危険である」といった主張は必ずしも正確ではありません。
実際、PFASには10,000種類以上が存在し、そのうち健康被害が確認されている3種類については、フッ素加工フライパンには含まれていません。
今回は、フッ素加工フライパンに使用されているPFASに加え、水道水への影響についても詳しく紹介します。
PFASとは何か（PFASのメリット）
PFAS（ピーファス）とは、「ポリフルオロアルキル化合物およびペルフルオロアルキル化合物」の総称で、炭素とフッ素の原資を持つ化学物質のことです。
この化学物質は、燃えにくく、水や油を弾く性質を持っているため、生活の中でさまざまな製品に使用されています。これらの性質により「フッ素加工のフライパン」にはPFASが使われています。
ちなみに、フッ素加工のフライパンを「テフロン（コーティング）」と呼ばれる方もいらっしゃいますが、テフロンは米国ケマース社（旧デュポン）の登録商標です。
PFASのデメリット
生活の中でさまざまなものに使われているPFASですが、デメリット（弊害）も確認されています。
PFASは自然界ではほとんど分解されない
PFASは「永久化学物質」とも呼ばれています。
その理由は、炭素とフッ素の結合が非常に強いため、自然界ではほとんど分解されないからです。そのため、環境中に排出されたPFASは長期間残り、土壌や水源を汚染する可能性があります。
PFASの毒性（健康被害、環境被害など）
ニュースなどでは、PFASは健康被害や環境被害の原因物質として報道されています。それは本当でしょうか？
実はPFASには、10,000種類以上の物質があるといわれています。その中で、現在ニュースなどで報道されている健康被害や土壌汚染の原因物質は、PFASのうちPFOS、PFOA、PFHxSの3種類となります。従ってPFASすべてが悪影響を与える原因にはならないのです。この3種類については人体に取り込まれると排出されにくく悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。特に「発がん性」や「免疫機能」への影響が懸念されるといわれています。
フッ素樹脂加工のフライパンは体に悪い！？
「フッ素樹脂加工のフライパンは体に悪い」という意見を耳にすることがあります。これはフライパンの使い方によっては、その可能性を否定できませんが、PFASが原因で健康被害を起こすかどうかについては、現在のところは懐疑的です。それは、現在製造・輸入されているフッ素加工のフライパンには、PFASのうちPFOS、PFOA、PFHxSは使われていないからです。
主に使われているのは、PFASの中でも「PTFE（ピーティーエフイー）」という物質で、現在のところ、健康被害は認められていないようです。
フッ素加工のフライパンを安全に使うポイント（熱しすぎない）
通常では問題なく使えるPTFEを使用したフッ素加工のフライパンですが、間違った使い方をすると健康に悪影響を及ぼす場合があるといわれています。
そのひとつが、熱しすぎです。
PTFEは360度以上になると有毒な蒸気が発生することがあります。空焚きや、過度な温度の調理には十分注意しましょう。
体に悪いPFASの使用は規制されている
PFASの中で、特に人体や環境に大きな影響を及ぼすとされるPFOS、PFOA、PFHxSは「特定PFAS」と呼ばれ、現在、日本国内ではその製造や使用が禁止されています。
PFOSは、2009年に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約（POPs条約）」において規制対象として指定されました。この国際的な動きを受け、日本も2010年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律（化審法）」を通じて、その製造や製品での使用を禁止しました。
また、PFOAについては、2019年にPOPs条約で「原則として使用禁止」とされ、日本では2021年からその製造および使用が法的に制限されています。
さらに、PFHxSに関しては、2022年6月のPOPs条約締約国会議において規制の必要性が認められ、日本では化審法に基づき2024年2月1日から規制が正式に施行されることとなりました。
フッ素加工のフライパンは人体に悪影響を与えない
PFASは、その優れた耐熱性や撥水性、耐薬品性といった特性を活かし、「防水・防汚コーティング」や「食品包装」、「消火剤」など、私たちの日常生活で幅広く利用されてきました。また、電気通信や半導体といった先端技術分野においても、欠かせない化学物質として重要な役割を果たしています。
現在、PFOS、PFOA、PFHxSといった特定PFASの規制が進んでいるため、確実な安全性を保証することは難しいものの、現時点では「フッ素加工のフライパン」などのPFASを含む製品は、安全に使用できると考えられています。
「フッ素加工のフライパン」＝「PFAS」＝「健康に悪い」といった単純な図式で不安を抱くのではなく、信頼できる情報をもとに冷静に判断することが求められます。製品を利用する際は、その特性や使用方法を正しく理解し、必要に応じて専門的な情報にも目を通すことを心がけましょう。
PFASフリー商品（フライパン）を使ってみる
PFAS製品に不安を感じる方は、代替として「PFASフリー」の商品を検討してみてはいかがでしょうか。PFASフリー商品の定義にはいくつかの種類があり、「特定PFASを使用していないもの」や「PFAS自体を一切使用していないもの」など、メーカーや製品ごとに異なる場合があります。
フライパンに限らず、鍋や炊飯器などの調理器具を購入する際は、商品説明や成分表示をしっかり確認し、ご自身が納得できるものを選ぶことが大切です。信頼できる情報をもとに、安心して使用できる製品を選びましょう。
PFASが水道水を汚染している現状と原因
フッ素加工のフライパンなどPFAS製品への懸念に加え、近年では水道水の安全性に対する不安が高まっています。
そこで、ここでは国内におけるPFASによる水道水汚染の現状について紹介します。
水道水の中から高濃度のPFASが見つかる
岡山県吉備中央町では、2022年に水道水から1リットルあたり1,400ナノグラムのPFASが検出されました。これは国の暫定目標値である50ナノグラムの28倍に相当します。
また、2020年度から2023年度にかけて全国の水道水を検査した結果、14か所で暫定目標値を超える濃度が確認されました。一部地域では、2020年から4年間連続で基準を超える濃度が検出されています。
汚染が発覚した地域では水源の切り替えや活性炭の設置が行われ、最新の検査ではいずれの地域も暫定目標値を下回っているようです。
高濃度のPFASが混入した原因
PFASは、防水服、泡消火剤、フライパンのコーティングなど広範な製品に使用されてきました。その結果、製造・使用過程や廃棄によって環境中に放出されましたが、環境省は、PFASの排出源がほとんど特定できていないとしています。
一例として、岡山県吉備中央町ではダム上流に置かれていた「使用済み活性炭」が汚染の原因と推測されていますが、詳細は明らかになっていません。
住民の影響と対策
汚染水を飲み続けた住民は不安や健康への懸念を抱えており、自治体では公費による血液検査を実施するなどの対応が進められています。
一部の自治体や水道事業者は、水質検査を義務化する動きや暫定目標値を水質基準へ引き上げる議論を進めています。
PFAS規制の状況
それでは、あらためて詳しくPFAS規制の状況を紹介します。PFAS規制は、その特性から、世界的な動きであることが分かります。
PFASの国際的な規制
先ほど紹介した通り、PFASの中でも「PFOS」「PFOA」「PFHxS」の3種類については、その有害性が国際的に認識され、製造・使用・輸入が国際条約で禁止されています。
この条約には日本やEUを含む180以上の国と地域が批准しています。アメリカは条約を批准していないものの、国内法で同様の措置を実施しています。
これらの物質は廃絶の方向に進んでいますが、過去の排出による環境中の残留が引き続き問題となっています。
水道水の規制
日本は、PFOSとPFOAに関して、水道水や地下水の暫定目標値を1リットルあたり50ナノグラムと決めています。ただし、この値は法的拘束力がなく、監視基準にとどまっています。一方、アメリカでは、2023年3月に新たな規制案を発表し、PFOSとPFOAそれぞれの水道水の規制値を1リットルあたり4ナノグラムとしました。
WHO（世界保健機関）は、PFOSとPFOAの指針値をそれぞれ1リットルあたり100ナノグラムとしています。
規制の必要性
専門家の中には、PFASの中には有害性のないものも含まれるため、有害性が確認された物質に限定した規制が求められるとの意見がありますが、PFASはリチウムイオン電池や光ファイバーなど、カーボンニュートラルや高度情報通信社会に不可欠な用途で使用されています。
このような状況を受け、規制強化により安全性を確保しつつ、産業活動への影響を最小限に抑えることが世界的に課題になっているようです
PFASの健康被害を受けないための方法
それでは、ここで普段の生活の中でPFASの健康被害を受けないための方法を紹介します。ただし、現状の規制を鑑みると、PFAS製品などは必要以上に怖がらなくてもよいと思います。参考にお読みください。
水道水の安全対策
PFASは飲み水を通じて体内に取り込まれる可能性があるため、水道水への対策が重要です。
以下の方法を検討してください。
- ＜PFASを除去できる浄水器の使用＞
- 活性炭フィルターを搭載した浄水器は、PFASの一部を効果的に除去できます。購入時には、PFAS除去性能が確認された製品を選びましょう。
- ＜ウォーターサーバーの利用＞
- 安全性が確認された水を使用することで、多くのリスクを軽減できます。
フライパンなどはPFASフリーの製品を選ぶ
フライパンをはじめ、調理器具や日用品にはPFASが含まれている場合があります。以下のポイントを意識しましょう。
- ＜PFASフリーのフライパンや調理器具を選ぶ＞
- 最近では、PFASを使用しないコーティングを施した製品が販売されています。購入時に製品ラベルを確認し、安心して使えるものを選びましょう。
- ＜食品包装にも注意＞
- 油や水分を弾く食品包装紙にはPFASが使われていることがあります。
信頼できる情報を収集する
環境省や水道事業者が提供する水質情報や検査結果を確認し、自分の住む地域の水道水の状況を把握しましょう。新しい研究や規制状況にも注目し、生活の中でのリスクを継続的に見直しましょう。
ウォーターサーバーを選ぶ際のポイント
水道水のPFAS対策には浄水器やウォーターサーバーが効果的です。そこで、ここではウォーターサーバーを選ぶポイントを紹介します。以下のポイントを客観的に評価することで、高品質で満足度の高い製品を選ぶことができます。
水源の品質
環境のよい地域の高品質な水源から採水されているかを確認します。
水の処理技術
RO（逆浸透）システムなどの高度なろ過技術を採用しているか。しっかりと不純物を除去しているかを確認しましょう。ちなみに、水の硬度10未満の軟水が日本人の口や体質に合っているといわれています。
安全性と品質管理
生産工場で、ISOなどの食品安全管理に関する国際認証を取得しているかを確認します。
利便性と用途への適合性
赤ちゃんのミルク作りなど、生活上の利便性を考えた機能があるか確認しましょう。特に、冷水と温水の使い分けが簡単なウォーターサーバーを選びましょう。
環境への配慮
環境負荷を軽減する再利用可能なボトル（リターナブルボトル）が使われているかも、ポイントにしたいですね。また、サーバー本体の省エネ性能を確認することも重要です。
コストとメンテナンス
ウォーターボトル1本あたりのコストやサーバーのレンタル費用をしっかり調べましょう。また、定期的な点検や部品交換に気軽に応じてくれるかなどもポイントです。
アルピナウォーターのご利用はいかがですか
アルピナウォーターは、北アルプスの名水を原水とし、NASA開発の「ROろ過システム」で分子レベルまで磨き上げた純度99.9％のピュアウォーターです。
硬度1.05の超軟水で飲みやすく、赤ちゃんのミルク作りや調理にも最適です。
さらに、国際認証「ISO22000」「FSSC22000」を取得した無菌工場で生産されており、安全性にも配慮しています。
＜アルピナウォーターをおすすめする理由＞
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- アルピナウォーターは、12Lボトルが1本1,242円（税込）で、500mlあたり51.75円と非常にお得な価格設定です。高品質なピュアウォーターを、手頃なコストで楽しめます。
- ２.欲しいときに欲しいだけ注文できる
- 定期購入の必要がなく、必要な時にオーダーできるため、使う量に応じて自由に調整が可能です。月の購入ノルマがないため、一人暮らしや旅行が多い方でも安心して利用できます。
- ３.無料宅配サービス
- 配送エリア内であれば、配送料が無料。追加注文時も、12Lボトル3本からのオーダーで、追加費用なしで届けてもらえます。
- ４.空きボトルの無料回収
- 使用後の空きボトルを無料で回収します。ゴミが出ず、家庭内での処理が不要です。
- ５.手軽にはじめられる
- 会員登録なしで利用を開始できるため、「まずは試してみたい」という方にも気軽にお試しいただけます。
まとめ（フッ素加工のフライパンとPFASとの関係）
PFASは、その撥水性や耐熱性から日常生活の多くの製品で使用されてきましたが、自然分解が困難であることから「永久化学物質」と呼ばれ、環境や健康への影響が懸念されています。
ただし、PFASのうちPFOS、PFOA、PFHxSの3種類は規制が進められています。これにより現状では、フッ素加工のフライパンの安全性は担保されているといえるでしょう（ただし、安全性の確定はできません）。
また、地域によっては、水道水を通じて体内に取り込まれるリスクがあるため、PFAS除去性能のある浄水器や安全性が確認されたウォーターサーバーの利用も検討しましょう。そのためには、環境省や水道事業者が提供するデータから、地域の状況や新たな規制に関する情報を継続的に確認することが大切です。
いずれにせよPFASに関する正しい知識を持ち、適切な対策を講じることで、健康被害や環境リスクに備えるようにしましょう。
※このコラムは2025年1月に書かれたものです。
PFASに関するQ＆A
- Q1.PFASとは何ですか？
- A.PFAS（ポリフルオロアルキル化合物およびペルフルオアルキル化合物）は炭素とフッ素を持つ化学物質で、水や油を弾き、耐熱性があるため、さまざまな製品に使われています。
- Q2.PFASの主な用途は何ですか？
- A.フッ素加工のフライパン、防水服、食品包装、消火剤など、日常生活や産業で幅広く利用されています。
- Q3.PFASのデメリットは何ですか？
- A.PFASは自然界でほとんど分解されず、「永久化学物質」と呼ばれるほど環境中に長く残留し、水や土壌を汚染します。
- Q4.PFASの健康被害にはどのようなものがありますか？
- A.PFOS、PFOA、PFHxSの3種類は発がん性や免疫機能への影響が指摘されており、人体に取り込まれると排出されにくい性質があります。
- Q5.フッ素加工のフライパンは体に悪いですか？
- A.現在製造されているフッ素加工フライパンには有害性が指摘されるPFOS、PFOA、PFHxSは含まれておらず、通常の使用では健康被害は認められていないようです。
- Q6.フッ素加工フライパンを安全に使う方法は？
- A.過度に加熱しないこと（360度以上）や空焚きを避けることで、有毒な蒸気の発生を防ぐことができます。
- Q7. PFASは現在規制されていますか？
- A.日本ではPFOS、PFOA、PFHxSの製造・使用が禁止されています。また、国際的にも規制が進んでいます。
- Q8.水道水からPFASを除去するにはどうすればいいですか？
- A.活性炭フィルターを搭載した浄水器や、安全性が確認されたウォーターサーバーを利用することで除去が可能です。
- Q9.PFASフリー商品とは何ですか？
- A. PFASフリー商品は、特定PFASを含まない、またはPFAS自体を一切使用しない製品を指します。ラベル確認が重要です。
- Q10. PFASが水道水を汚染する原因は何ですか？
- A.防水服や消火剤などの製造・廃棄過程で環境中に放出されたPFASが、長期間にわたって水源を汚染するといわれていますが、現在のところ原因は確定されていないケースが多いようです。
- Q11.PFASについての信頼できる情報はどこで確認できますか？
- A.環境省や水道事業者が提供する水質データや最新の研究結果を確認することが推奨されます。
- Q12.ウォーターサーバーを選ぶ際のポイントは何ですか？
- A.高品質な水源やRO濾過技術の採用、安全管理体制、環境負荷の低いボトル使用、そしてコストとメンテナンス性を確認することが重要です。
＜参考文献＞
食品全然委員会「ファクトシート」
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/f02_fluorocarbon_polymers.pdf厚生労働省「水道における有機フッ素化合物について厚労科研等による検討状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001234729.pdfNHKニュースサイト
